ハンナ・アーレントは、「真理と政治」(みすず書房「過去と未来の間」所収)の冒頭部分 において、「存在するものおよび存在するがゆえに人間に対して現象するものを、進んで証言する人々」、即ち「『真理を語る者』がいなければ、永続性や存在の持続は 考えることさえできない」 しかし「いかなる時代においても真理を探究する者や真理を語る者は、自分の仕事に危険が伴うことを自覚していた」と述べている。
 近代は「真理」を、数学,科学,哲学等に関わる「理性の真理」および、歴史等に関わる「事実の真理」として捉えてきた。「事実の真理」は政治に相関的な場において生成し、政治はその属性から、結局「真理」と「虚偽」に潜在的な交換可能性を付与したと言える。一方「理性の真理」は、対等な市民としての他者の「意見(ドクサ)」により、政治的潜在的に相対化され得るばかり

ではなく、より本質的には、「真理」の概念自体に暗黙の強制力が内在する為、「真理」を語る者は政治的な存在としての「市民」と政治「権力」との双方からの圧迫に対峙せざるを得ない。「真理」のアクチュアリティは、「政治」との関わりにおいて存在し続けている。
 そうした「真理」の境位を、ジャック・デリダは「嘘の歴史 序説」(未来社、西山訳)で、嘘の「倫理的な次元とある種の政治的な歴史のあいだに開かれる深淵」を手掛かりに、行為遂行的地平において捉え返そうとする。 その際参照されるべきは、「物事が生ずるとは、本来、所与の状況に元々内在する他のすべての可能性が リアリティによって締め出される」ことだと言う、アーレントの指摘である。 by びれいぽいんと店主

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