「ドビュッシー、音楽と美術」展をブリヂストン美術館で見てまいりました。ドビュッシーが生きた時代は、音楽も美術も文学も、その作品においてヨーロッパ世紀末の何たるかを表現した時代だったとも言えます。
 ドビュッシーの唯一のオペラである「ペレアスとメリザンド」の展示では、Carlos SCHWABEの挿絵もあり、その音楽に改めて思いをいたすことになりました。
 先般BSで「ペレアスとメリザンド」のパリ・オペラ座バスチーユ公演の録画が放映されましたが、その抽象化された舞台は、メーテルランクの詩のもたらすイマジネーションをうつす身体の動きと、さざ波のように掻き立てられた情念が絶望的な官能の高まりを織り上げるかのようなドビュッシーの音楽との融合が、見事でした。

 オペラというと、ふつう私たちは、ヴェルディなどのイタリアオペラや、ワーグナーなどのドイツオペラを思い浮かべます。イタリアオペラは情熱的なアリアによって感情を直接的に観客にぶつけてきます。ワーグナーなら、悲劇へと至るプロセスを現在進行形の音楽的な現実として観客に共有せしめます。ではドビュッシーなら?
 おそらく私たちは、あくまでも物語の予感のなかに止まりながら、夢を見るがごとく物語の進行に立ち会うのです。その予感と進行との乖離を、詩と音楽が果てしもなく押し拡げ、或いは埋めていきます。そうして私たちは、作品のうちを踏み迷いつつ、世紀末の象徴主義の真髄を知るのかもしれません。 by びれいぽいんと店主

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