3月の穂高はまだまだ冬山である。人を容易には寄せつけない。それでも雪の稜線には人の姿がある。雪山へと人が向かうのは、風雪による困難さ故にピークハントの満足感もいや増すからだろうか?そうかもしれない。が、それだけではないようにも思う。
雪山は美しい。その白い輝き。その静寂。雪原に裸木の立ち尽くす姿。岩と雪の織りなすストイックな表情。それらを感じながら歩みを進める時、人は至福の異空間を横切っている、自分自身に気づくのかもしれない。
横切っていく、雪の白さの上で、聞こえてくる音楽があるとすれば J.S.Bachになるだろう。
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