フランク・ロイド・ライトは、自身の提唱するオーガニック・アーキテクチャー「有機的建築」の本質を「内部から形成されるもの」と捉えた。
 ライトは、建築の「いちばん重要な統合性は、建物の内なる実在性の感覚」(ナチュラルハウス)だと書くが、「内なる実在性」のイメージとして彼が参照するのは、1906年に英文で出版された 岡倉天心の「茶の本」であり、「部屋の実質は屋根と壁で囲まれた 空虚な空間に見いだされるのであって、屋根と壁そのものにではない」との記述である。
 一方、建築家としてのライトは、「新たな価値と統合性を求めて素材の本性を見きわめ、自然のパターンに もとづいて建造されるとき、建築は渾然一体となった装飾を持つ」(有機的建築)と言う。何故なら、「素材は立体の適切な大きさ、輪郭、さらにはプロポーションを

決定」する力を持ち、「素材のもつ固有の特質はすべてのよりどころとなる」からである。
 ライトは「内部」の概念と同時に、自然に内在する「固有性」に着目する。「設計の上でも建設の上でも、素材の本性、方法、目的のすべてが合致したとき、形態と機能は一つになる」(ナチュラルハウス)のであり、同時に、「人間はつねに固有性を求めてきた」(有機的建築)と語る時、「固有性」と言う言葉において、個々の人間の意識のそれと「自然のパターン」のもつ固有性とをライトは重ね合わせ、侵犯させている。「内部」の観念と「固有性」の概念は通底しており、それが外面的な様式への捉われに反旗を翻す根拠となって、ライトの思想を機能させたのである。 by びれいぽいんと店主

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